ヤマボウシには自家受粉性がなかった

どうやらヤマボウシには自家受粉性がないらしい。

ヤマボウシを研究している八田洋章先生の記事でヤマボウシには自家受粉性がないとはっきり書かれているし、ハナミズキの本場アメリカでのハナミズキうどん粉病耐性を持たせるためのヤマボウシと交配させるという論文でも自家受粉性がないから交配は全部蜂に任せたとかいう雑すぎる実験記事が出てきた。

 

なぜ以前は自家受粉性があるのではないかと思っていたかというと公園で見るヤマボウシには基本的に大量の実がついていたからだ。また、ネット上で見られるヤマボウシの実の写真は多花性の花がそのまま全て実が付いたように豊産な様子のものだという印象があった。

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色づいているが癒合していない

実際に見ている公園等のヤマボウシは半分くらい上の写真のような癒合していない実であった。環境にもよるかもしれないが癒合してサッカーボールのような形になっているのもはそれほど見られなかった。

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癒合しているヤマボウシ

癒合しているヤマボウシはやはり受粉しているから肥大が促進されているのだろうか。

上の癒合していない小さな赤い実は今の時期(7月)に見つけたものだ。引っ張ると簡単に取れたので今後の台風などで落果するものだったかもしれない。味はかなり薄いが甘みがあった。まだ青い実もたくさんあったので単為結果として秋まで保つのだろうか。

まったく相手にされていないがライバル視しているマンゴーも実は単為結果するらしい。しかし、肥大が少なくほとんど市場に回っていないが近年では種が薄く食べやすい格安のマンゴーとして一部出回っているようだ。こちらも多く落果するらしい。

 

自家受粉性がないとわかった今、春に行ったミルキーウェイの人工授粉もどきはほぼ無意味に終わったようだ。しかし、実はしっかり残っている。

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ミルキーウェイ

昨年のビッグアップルでも同様だったが実は落果せずになんとか残っているが、総苞がいつまで経っても落ちないのだ。もちろん公園や街路樹に比べるとかなり穏やかな環境だが風に煽られ、今年の長雨を浴びているのにも関わらず殆どの花で苞が落ちる気配はない。今年はビッグアップルに花芽が着かず、ミルキーウェイのみの開花となった。ホンコンエンシスは1か月近く開花期がずれていた上になぜか花粉がかなり少ない、訪花昆虫はまともな奴が来ないという状況だったのでほぼ受粉できていないと思う。

昨年はホンコンに花芽が着かずビッグアップルだけだったので似たような状況だと思う。

受粉できていないと仮定するといつまで経っても苞が落ちないのは受粉できていない証拠なのかもしれない。受粉完了していれば多くの花はさっさと離層形成が起きて落花するようだ。

4か所ほどヤマボウシを観察しに公園を巡っているが期待していたほど上の癒合した実が見られない。落果もかなり起きており、秋の採取はかなり減りそうだ。私が住んでいる地域は虫が非常に少ない。花の形状的に期待しているハナバチ類は1回も来たことがない。公園等は24時間監視しているわけではないがそれでも花が咲いていた時期に花粉が目当ての虫に遭遇したことはほぼなかった。

ヤマボウシの花粉媒介者は基本的にはハナバチ類なのだろうが非常に環境が悪いところに住んでいるのかもしれない。それでも受粉しているであろう果実があるのだから何かいるのであろうが。

 

ネット上のヤマボウシの写真で大量に結実しているものは近くに別の木が生えているのだろうか。圃場であったり、住宅街でシンボルツリーとして近隣に植えてあったりといったところだろうか。それにしてもホンコンエンシスなどは最近増えてきたといっても花期が普通のヤマボウシとは違うし、なかなか隣接した家で植えてあることは中々ないと思うが、住宅密集地域なら受粉に成功することもあるかもしれない。それか寄せ株もので別の木が1本になってる場合も考えられる。

そもそも普通のヤマボウシの単為結果もわからないし、ホンコンエンシスの自家受粉性もわからない。近所のホンコンエンシスを何か所か遠目に観察してみたがあまり結果している様子はなかった。

そのホンコンエンシスは今年は花粉が出なかったうえに、1本を残して落果してしまった。その1本もおそらく実はならないだろうという雰囲気だ。

 

最近、実が食べられることにも着目されているヤマボウシだが、自家受粉性がなく、単為結果性もないかもしれない。ヤマボウシに実がならない、落果してしまうという人はぜひもう1本(笑)。

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次回に続く。