ヤマボウシ

みなさんヤマボウシという木をご存じですか?有名なハナミズキによく似ていて街路樹や一般家庭にもよく植えられている樹木で私が一番好きな植物なんです。

ミズキ目ミズキ科ミズキ属ヤマボウシ亜属の落葉中高木と言われても多くの植物に興味がない人は、そうなんだ、で終わりだと思います。

ヤマボウシの花

まず、目や科や属っていうのは植物と動物では進化の流れが少し違う気もしますけど、猫で例えると、食肉目(肉食獣が多く含まれる仲間)の中でネコ科(普通のイエネコやライオン、トラなどの猫の仲間)、さらにイエネコに近い仲間をネコ属(イエネコを含むいわゆる猫やヤマネコなど)みたいな感じで細分化して分類しているんです。

 

話が逸れますが、犬で例えようかと思ったんですけどイヌ科はライオンみたいなわかりやすい生き物がいなかったので猫ちゃんにしました。その中でいえば以外かもしれませんがイヌとキツネって割と近い生き物なんですね。

 

話をもとに戻しますと、ミズキ目(ミズキ科やアジサイ科など)の中のミズキ科(ミズキ亜科とヌマミズキ亜科<ハンカチノキなど>に分かれる)の中のミズキ属(4つの亜属に分かれる(ミズキ亜属、ヤマボウシ亜属など)の中の1種ヤマボウシの話をします。

※亜属っていうのは属をさらに細分化した分類のことです。

花期になると上に伸びる

ヤマボウシという木は日本に自生している樹木で、5月頃に白い花を木一面に咲かせることから白い頭巾をかぶっているような法師のような出で立ちから山法師と呼ばれています(諸説あり)。白い花の花弁のように見えるものは総苞片というガクが発達したものでいわゆる花びらではありません。総苞片の中央にある球状のものが本当の花であり近づいて観察すると本当の花弁や蕊などがあり、たくさんの花の集合体であることがわかります。かなり遠い親戚ですが同じミズキ目のアジサイもよく見ると似たような花の構成をしていると思います。

このたくさんの花はそれぞれが受粉して独立した果実になるのではなく、実が肥大していく過程で融合して集合果という一つの実になるんですね。

この実は古くから食用にされていてネットリとしたマンゴーのような味だとか書かれていることが多いのですが明らかに過大評価です。ネットリしすぎていて皮が硬いため剥いて食べるようなことがしにくく、甘みはあるが石細胞(梨のようなジャリジャリ感)があり繊維もあるので口に残る風味があります。また味が良いものと悪いものの差が激しくあまり美味しくないという感想を抱いて終える人が実際は多いのではないでしょうか。実際に美味しければもっと果樹としての評価を受けていると思います。

ヤマボウシの実

しかし、そんな食用としては微妙な評価のヤマボウシにも救世主がいます。

近年、庭木として高い評価を得ている常緑ヤマボウシというものがあります。新興住宅地に行けば必ず一本は植えられていると思われるぐらいメジャーになってきている樹木の1つです。

一番最初に落葉中高木と書いたヤマボウシと違い名前のとおり常緑の樹木です(実際はやや寒さに弱く落葉することもある)。学名Cornus hongkongensis コルヌス ホンコンエンシスといって学名の通り香港などの中国南部に生育する日本のヤマボウシの親戚です。

常緑ヤマボウシの花

また話が逸れますが、信じられない人もいるかもしれませんが植物にまったく興味がない人に植物の話をすると落葉樹と常緑樹の区別がついてない人が多々います。今の時期(12月)に外に出ると葉が落ちている(落葉している)木とまだ緑の葉が付いている木がありませんか?まったく興味がない人からすると風景の一部の緑のナニカでしかなく、春までそれに気づかないとんでもなく鈍感(興味がない)な人がいるようです。

落葉樹は気候の良い春から秋に高効率なソーラーパネルを作ってエネルギーを蓄え、寒くて日の短い効率の悪い冬にはパネル(葉)を落として蓄えたエネルギーで冬をやり過ごします。逆に常緑樹は効率の悪い冬にもジワジワと発電し、1年を通してエネルギーを蓄え続けます。

常緑ヤマボウシは中国南部の暖かい気候の植物なので基本は落葉せず、1年中葉をつけていますが日本の寒い冬では葉を維持し続けることは非効率なこともあるため紅葉してさらに落葉することもある半常緑樹といったところです。

話が逸れ続けますが、常緑樹も春以降はもちろん成長しやすく効率の悪い古い葉は落として新しい葉を展開するため、落葉しない木というのはありませんので家に樹木を植える際は常緑樹だからといって落ち葉掃除に追われないということではありません。それでも落葉樹のように一斉に落葉することは少ないですが。

冬でも葉があり花も咲くサザンカ



本題に戻ります。

そんな近年評価が上昇している常緑ヤマボウシですが、日本の普通のヤマボウシの実よりもさらに果実が美味しいと個人的には思います。

常緑ヤマボウシの実



まず、糖度が(測ったことない)が普通のヤマボウシよりもかなり高いと思います。口当たりがよく、普通のヤマボウシよりも食後の風味がよく感じます。やや果実は小さく感じますが豊産性で果実が大きい品種を選抜すれば改善の余地があると思います。そう思い偶然にも大実の種類ができないかと思って種をせっせと発芽させていますが報われる日はくるのでしょうか。

上のような多くの種子を蒔いて優れた性質をもつ個体を選抜するして品種として確立することを選抜育種というのですが、もう一つ異なる種の植物を交配してそれぞれの優れた点を遺伝させることで新たな種を作る育種法を交雑育種といいます。

違う種類の生き物を混ぜちゃうだなんてできるの?という方もいると思いますが、植物に限らず、動物でもライオンとトラの雑種ライガーやヒョウとライオンの雑種レオポンなんかがいます。

私は最初ニュースを見ていたら、近年外国のカブトムシやクワガタが自然下に放流されて日本の昆虫と交雑して遺伝子汚染が起きているというのを見て、それじゃあ最強のカブトムシができちゃうじゃん!と思って交雑を知りました。ただ甲虫にまったく興味がないので綺麗なお花が咲く植物で最強の植物が作れないかな~とも思い今に至っています。

動物はほとんど飼育下でしか種間雑種・属間雑種は生まれないので生命倫理が非常に問われそうな生き物ですが、植物はそんなの関係なく飼育下、自然下関係なく交雑が起きています。さらに人間が意図的に異種間で交配を行い新たな種・品種が生まれています。

そこで取り上げるのがヒマラヤヤマボウシという種類です。ホンコンエンシスに続きまた直球の名前で中国南西部のヒマラヤの付近に自生しています。木の様子はホンコンエンシスとは少し違い全体的に大柄な感じです。実も大きく2倍近くあり4~5cmあります。果皮の色は赤ではなく黄色で実の形が不安定です。この種の良いところはもちろん果実の大きさですが味がめちゃくちゃ不味いですわずかな酸味と強いえぐみ生臭い風味でゲロの味がします。味がとにかく問題です味が美味しいホンコンと実が大きいヒマラヤ、2つの良いところが合わさればまさに最強のヤマボウシで完成します。もちろんいいとこどりなんて可能性は低く実が小さく味がゲロの果実が誕生する確率の方が高いです。

ヒマラヤヤマボウシの花

ヒマラヤヤマボウシの実

さらに植物は交雑しやすい種類もあればどんなに近い種類の生き物でも交雑しないものもあります。私は研究者ではないのでせっせと人工授粉ごっこをして偶然できた種子をわずかな土地で発芽させるのみなのでそんな奇跡の植物はいつかできるのでしょうか。。。

しかも土地がないので鉢栽培、樹勢も弱く毎年わずかな結実を楽しみにするのみです。

 

それではみなさん、さよなら~。